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生糸

黄八丈は平安時代より織り続けられてきました。

そして、その原料を得るために蚕も飼い続けてきました。

八丈島にはクワの木がたくさんあり、昭和20年代までは、たいへん養蚕が盛んでした。

島の繭は病気も少なく、全国へ出荷されていました。

しかし、昭和30年代になると生糸の需要が減り、、養蚕業は衰え始めました。

そして、八丈島では、この長い伝統を持つ養蚕をやめてしまいました。

現在では、黄八丈で使う生糸は、全て島外から仕入れています。

ここでは、かつて八丈島で行われていた、「製糸」(八丈島では 糸しきといった)について紹介します。

養蚕の写真は奥山日出和さんからお借りしたものです。


昭和30年代の養蚕風景

 

1.糸繰り

鍋の中で繭を熱湯で煮て、膠着している繭糸を解きほぐし、糸口を竹ばしで取り集めて、つけておく。

糸口を数本合わせて、一本の糸にし、座繰機で枠に繰り取る。

この作業は、一日に約一貫目(3.75kg)の繭を処理することができる。

一貫目の繭からは180匁(もんめ675g)〜200匁(750g)の糸が得られる。

2.水漬け

座繰機で枠に繰り取った糸は、枠のまま約一週間,清水の中に漬け込んでおく。これを水漬けという。

水漬けの目的は、糸が乾燥したとき、粘着しないようにするためと、糸を柔軟にするためである。

水漬けしないと糸が切れやすくなる。

3.糸撚り(いとより)

繭一個からでてくる一条の糸が、二十数本束ねられ、撚られて生糸となる。

この糸ではまだ弱いので、二本合わせて撚って、一本の糸にする。

右の写真は糸撚した生糸を一綛(わな)ずつに巻き取っているところ。

4.おやり

完全に繭を作りおえないためにできたくず繭、座繰りのはじめや終わりのに取れる糸などを全て指で引き伸ばし、撚りをかけた糸を「おやり」という。

おやりを横糸として織った反物を「紬」(つむぎ)という。

5.練り(精錬)

繭から取り出したばかりの糸(生糸)には余分なタンパク質が含まれており、これをアルカリで取り除く。

かつては、わら灰の汁に生糸を一昼夜つけておき、翌日また新しい灰汁を加えたもので、3時間くらい煮沸したあと、多量の水で洗って、天日で乾かしてきれいな糸とした。

現在では、灰汁の代わりに炭酸ナトリウム(ソーダ)が用いられている。

この場合は、糸100匁(375g)に炭酸ナトリウム20匁(75g)の比で、水にとかし、布袋に入れた生糸を浸けて、約3時間煮沸したあと徐々に冷やし、水洗する。

十分に水洗する必要があり、一昼夜、水に浸したまま放置し、その後水分を除き、天日で干す。


生糸の精練(めゆ工房)


精錬する前の糸を「生糸」と呼び、精錬後の糸を「絹糸」と呼ぶ。

絹糸は生糸に比べ、軽く柔らかく風合いがたいへんよい。

ただし、絹の取引は全て生糸で行われる。

写真の左が絹糸、右が生糸。


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(C)ITO Jun