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黄八丈を応用した化学実験

 

本来の黄八丈は気の遠くなるような時間と手間を必要としますが、ここでは、実験室で短時間に黄八丈を再現し、その染色の手順と化学的な原理が学べる方法を紹介します。

 

  【器具・薬品】
300mlビーカー   ガラス棒   ピンセット  絹の糸または布(ない場合は染色用の白い毛糸  木綿などの植物繊維は適しません)
 

染色用植物

媒染用薬品

黄色 コブナグザ(かりやす)の茎、葉を乾燥したもの 硫酸アルミニウムカリウム AlK(SO)・12HO
塩化カルシウム CaCl
樺色 タブノキ(まだみ)の樹皮 硫酸銅 CuSO・5HO
塩化カルシウム CaCl
黒色 スダジイ(しい)の樹皮 硫酸鉄(U) FeSO・7HO
硫酸銅 CuSO
・5HO
 
本来ならば媒染は木の灰汁などを用いますが、ここでは化学薬品を利用し、草木染めの発色の原理を学びます。

 

  【方法】
300mlビーカーにコブナグサなどの植物を細かくちぎって半分ほどいれる。植物が ちょうど浸るくらいの水を加え加熱する。

できるだけ濃い溶液がよい。コブナグサは30分程度でよいが、タブノキ、スダジイは濃縮するようなつもりで何時間も煮詰めたほうがよい。

コブナグサ

タブノキ スダジイ
沸騰してから20分くらいたったら、500mlのビーカーに煮汁をガーゼでこし取 る。
染色する糸をお湯で洗い、よくしぼる。これを2、3回行う。
糸を、こし取った煮汁に入れ、しばらく放置する。(長ければ長い程良い)
それぞれの媒染用薬品の3%の溶液を100mlつくり、これを媒染液とする。 
媒染
<黄>
糸を軽くしぼり、硫酸アルミニウムカリウム溶液に糸を数分間入れ、次に塩化カルシウム溶液に入れる。

左が染色だけの糸。右が媒染をした後の糸。
<樺>
糸を軽くしぼり、硫酸銅水溶液に糸を数分間入れ、次に塩化カルシウム溶液に入れる。

左が染色だけの糸。右が媒染をした後の糸。

<黒>
糸を軽くしぼり、硫酸鉄水溶液に糸を数分間入れ、次に硫酸銅水溶液に入れ、もう一度硫酸鉄水溶液に入れる。

左が染色だけの糸。右が媒染をした後の糸。

発色が悪い場合は4,6を何度か繰り返す。(同じ煮汁と媒染液でよい)
糸を取り出して水洗いし、軽くしぼり自然乾燥する。

 

黄八丈だけではなく、草木染めでは「媒染」をします。これは、金属イオンで色を定着・発色させるためです。
黄八丈では、これを化学薬品ではなく、自然の中にあるものでおこないます。

 


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(C)ITO Jun