草木染めの原理

 

染める とは
「染めるということを科学的に考えると、次の3つのことがあげられます。

 1.染料を繊維に物理的、化学的な力で結合させる。

 2.繊維を洗ってもこすっても。染料がはがれ落ちない。
   日光に当たっても変色しない。

 3.目的の色調が着色される。

草木の色素だけでは染まらない?!
植物を煮だした汁に繊維をつけて乾燥させれば、基本的にはその色素が繊維に着色されるはずです。

しかし、それでは、色がたいへん薄かったり、くすんでいたり、また、すぐに色落ちしてしまったりします。

そこで、植物の色素を鮮やかに発色させ、色落ちしにくくするために、「媒染」という作業を行います。

媒染 とは
植物の色素に鉄・アルミニウム・銅などの金属のイオンが結びつくと、錯体という化学的構造を作り鮮やかな色を発色したり、水に不溶な物質に変化します。

そこで、植物の色素をしみこませた繊維をこれらの金属イオンを含む液につけると、繊維にからみついた色素が、その繊維の上で発色し、繊維としっかりと結びつきます。

この作業を媒染といいます。

こうして、繊維を鮮やかな色に染色することができるわけです。

媒染液には酢酸鉄やミョウバン、硫酸銅などが用いられます。

ただし、媒染を行うと、本来の草木の持っている色合いとは違ったものとなってしまうため、花びらなどその色そのままにに染色したい場合は、濃い煎汁を作り、媒染なしで染色することもあります。

黄八丈の染色
黄八丈でも、まずは、それぞれの植物の煎汁を絹糸に染みこませる「フシヅケ」という作業を行います。

このときはまだ、どの糸も薄く黄ばんだ程度にしか着色されていません。

次に、木の灰汁に糸を漬け込む「アクヅケ」という作業を行います。

すると糸は、黄色や樺色の鮮やかな色を発色します。

生物の体の中にはいろいろな種類の金属イオンが存在します。たとえば、人間でも血液の中には鉄が含まれています。

したがって、木や葉を燃やすと、植物に含まれている金属イオンが蒸発せず、灰の中に残ることになります。

この灰を水に溶いた上澄み液には、たくさんの金属イオンが溶け込んでいます。

フシヅケを行った絹糸にアクヅケを行うと、布に染み込んだ植物の色素が、灰汁の中の金属イオンと反応し、鮮やかな色を呈するわけです。

すなわちアクヅケというのは、媒染の作業を行っているということになります。

「泥ヅケ」の場合も同様に、泥の中に含まれる多量の鉄イオンが媒染の働きをしています。


古代の八丈島の人々は長い年月をかけ、自分たちの経験だけからこれらのことを発見しました。

そして、自分を取り囲む限られた自然の中から、島に豊富にあるカリヤスやマダミの木を選びだし、鮮やかな黄を主調とした、丈夫で繊細な絹織物を生み出したのです。

黄八丈を応用した化学実験

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(C)ITO Jun